お役立ち情報
ビル清掃業界は深刻な人手不足に悩んでいます。少子高齢化や作業環境の悪さが原因とされており、清掃品質の低下や経費の増加、作業安全性の悪化など様々な問題を引き起こしています。
この問題を解決する鍵となるのが、 特定技能人材の活用 です。特定技能制度は、外国人労働者が特定の分野で就労できるよう、2019年4月に創設されました。
ビル清掃業界では、特定技能1号の「ビルクリーニング」に該当する人材の受け入れが可能です。外国人労働者は、日本の労働意欲を補い、これまで以上に質の高いビル清掃サービスを提供する可能性を秘めています。
ビル清掃業界の人手不足を解消し、持続可能な清掃サービスを提供するためには、特定技能人材の積極的な活用が不可欠です。
- ビルクリーニング業界人手不足の根本的な問題
ビルクリーニング業界では、建物の増加と「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」に伴い、清掃員の需要が高まっていますが、有効求人倍率は2.95倍に達し、人材確保が困難な状況です。
特に女性や高齢者の労働力が多いこの分野で、他分野への就業機会の増加が人手不足を加速させています。この人手不足が建物の衛生状態に悪影響を及ぼす可能性があるため、特定技能外国人の受け入れが必要とされています。
ビルクリーニング業界だけでなく、現在日本は全体的に深刻な人手不足に直面しています。その背景には少子高齢化による労働人口の減少があります。
労働力の供給が制約される一方で、団塊世代の定年退職が進行し、64歳以下の生産年齢人口が減少傾向になる一方、75歳以上の高齢者人口の割合が増加し続けていくことが予想され、さらに景気回復に伴う雇用需要の増加が状況を悪化させています。
それは下記の「年齢別人口推計の推移」を見ても明らかです。
生産年齢人口が減少を続ける中、女性や高齢者の労働参加率は上昇すると予想されるも、それだけでは十分な労働力を確保するには至っておらず、業界全体で人手不足が深刻な問題となっています。
アルバイトやパートの平均時給は約1,085円、この賃金は他業種と比較しても特別に高いわけではありません。また、ビルクリーニングの正社員の平均年収は約371万円で、初任給は21万円ほどとなっています。この水準は、特に都市部では生活費を考慮すると決して十分とは言えず、若年層の応募が少ない一因ともなっています。
さらに、労働条件の厳しさも問題です。ビルメンテナンス業務は体力を要することが多く、夜間や早朝に行われることも少なくありません。これにより、特に高齢者や女性労働者にとっては負担が大きく、長期的な勤務が難しいケースが多々あります。このような環境下で、労働者は他の職種に転職する傾向が強まり、結果として業界全体の人手不足が深刻化しています。
加えて、地域別最低賃金の上昇も課題となっています。2023年10月以降、全国平均で最低賃金が1,004円に引き上げられることから、企業側のコスト負担が増加し、さらに賃金水準の引き上げが難しくなる可能性があります。これにより、ビルメンテナンス業界の競争力が低下し、さらなる人材流出を招く懸念が高まります。
- ビルクリーニング業界の人手不足がもたらす影響
ビルクリーニング業界が抱える人手不足の問題はますます深刻化し、経済が成長し、都市が拡大する一方で、清掃スタッフの確保が難しくなりつつあります。この人手不足は、業務の遂行に直接的な影響を与え、サービスの質や範囲に影響を及ぼし始めています。どのような影響があるのか具体的にみていきましょう。
人材不足により、清掃作業を急いで行ったり、本来であれば2人以上で行うべき作業を1人で無理やり行う必要性が出てきたりと清掃作業が十分に行われず、ビル内の衛生状態が悪化する可能性があります。
これは、従業員の健康や顧客の満足度に悪影響を及ぼす可能性があります。
清掃品質の低下は、埃やゴミが溜まりやすくなり、清掃頻度が低くなるため、汚れが蓄積されます。適切な清掃方法が実施されず、汚れや細菌が除去されません。衛生リスクとしては、埃やゴミが溜まることで、ダニやカビが発生しやすくなります。また、清掃頻度が低くなることで、細菌やウイルスが繁殖しやすくなります。適切な清掃方法が実施されず、感染症のリスクが高まってしまう可能性もありうるのです。
これらの問題は、ビル内の環境悪化だけでなく、従業員の健康や顧客の満足度にも悪影響を及ぼします。
労働者の確保が困難になると、賃金の引き上げや雇用条件の改善が求められ、これが人件費の増加に直結します。また、適正な数の人員を確保できないと通常の業務をこなすためにより1人1人の業務時間が通常の業務時間より長引くことが予想されるので、残業代が膨らみ最悪のケース従業員がやめてしまい仕事が回らなくなる可能性もあります。また、外部委託や機械化を検討するケースも増えていますが、これも経費の増加につながります。
結果として、業界全体の経営圧迫が進み、さらなる負担が企業にのしかかっています。
現場が人手不足になると人が足りない状態で時間内に全ての作業を完了させるために、従業員は急いで作業を行うことが多くなることが予想されます。そのため、ミスやケガのリスクが高まり、作業安全性が悪化します。
また人が居なく忙しくなることで清掃用具や機械のメンテナンスまでなかなか手が回らなくなり、故障や破損を起こしやすくなったり、安全な作業方法をまだ十分に理解していない経験の浅い従業員が作業を行うとケガをするリスクが高まったりする状況の悪化が懸念されます。
- ビルクリーニング業界人手不足解消のための施策
ビルクリーニング業界の人手不足を解消するためには、いくつかの方法があります。外国人労働者の積極的な採用、IoTデバイスによる効率化、ロボットクリーニング技術の導入が有効な手段と考えられます。
1つずつ詳しく見ていきましょう。
外国人労働者の中には、ビルクリーニング業務に必要な高い技能を持つ人材も存在します。その為、特定技能制度を活用することにより、ビルクリーニング業務に特化した人材を安定的に確保することができます。これらの外国人労働者は、これまで経験してきた豊富な知識と技術を活かして、ビルクリーニング業務の質向上に貢献することができるのでその労働力には期待が寄せられています。
しかし、外国人労働者を採用するためには、言語や文化の違いを克服するための取り組みが必要です。 職場環境の整備や日本語研修など、外国人労働者が働きやすい環境を整える必要があり、外国人労働者と日本人の従業員とのコミュニケーションを円滑にするための工夫も必要です。
IoTデバイスとは、インターネットに接続されたセンサーや機器のことです。ビルクリーニング業界では、センサー、AIカメラなどのIoTデバイスが活用されています。センサーは、室内の温度や湿度、照度などを測定し、データとしてクラウドに送信され、収集されたデータは、清掃の効率化や省エネに活用することができます。
AIカメラは、室内の状況を監視し異常が発生した場合にアラートを発するので清掃スタッフの安全性を確保することができるため、これらIoTデバイスの導入により効率化を図ることができます。
ロボットクリーニング技術は、ビル清掃の自動化を可能にする技術で、床掃除や窓拭き、ゴミ収集など、さまざまな作業を自動で行うことができます。
ロボットクリーニング技術の導入には、人手不足の解消、清掃品質の向上、作業効率の向上、コスト削減などのメリットがありますが、初期費用が高い、汎用性が低いなどの課題もあります。
ロボットクリーニング技術は、ビルクリーニング業界の人手不足解消に大きな可能性を秘めていますが、課題を克服し、実用的な技術として普及させるためには、さらなる技術開発が必要とも言われています。
- ビルクリーニング業における外国人労働者の活用と特定技能の重要性
「特定技能制度」とは人手不足が深刻な14業種で、高度な技能を必要としない単純労働に従事する外国人労働者の受け入れを可能にする制度です。
ビルクリーニング業も対象業種に含まれ、今後、外国人労働者の受け入れが進むことが予想されており、ビルクリーニング業の人手不足解消にも大きな役割を果たすと期待されています。
ビルクリーニング業界で活躍できる特定技能では、建築物内部の清掃に該当する「建築物清掃業」、または建築物清掃業に該当する業務に限った「建築物環境衛生総合管理業」を受入れの対象としています。
そのため、ビルクリーニングに関する全ての業務を一任することはできないため、しっかりと働いてもらえる業務とそうでない業務の区別をしておくことが企業側に求められます。
2019 年から在留資格「特定技能 1 号」が開始され、ビルクリーニング業の分野では受入れ上限枠が20,000 人とされています。また令和 4 年度 6 月時点では全ての分野で合計 87,471 人が受け入れられており、ビルクリーニング分野で 1,133 人の特定技能外国人が就労しています。それに伴い、企業側の特定技能外国人の雇用企業数も増えています。
下記のグラフは「特定技能外国人の雇用企業数」をまとめたものですが、年々増加しているのがわかります。
特定技能制度に基づき、外国人労働者がビルクリーニング業界で従事する主な業務は、建築物内部の清掃です。具体的には、多数の利用者が利用する建築物(住宅を除く)の内部で、衛生環境の保護、美観の維持、安全の確保を目的に、場所や汚れの種類に応じた適切な清掃作業を行います。さらに、関連業務として、現場管理や清掃用機械の維持管理、アメニティ補充やベッドメイク作業などの客室清掃業務を担当することが想定されています。
ビルクリーニング分野で特定技能1号の在留資格を取得するために、外国人労働者に対しては「技能水準」と「日本語能力水準」の両方を満たすことが求められます。日本語能力については、独立行政法人国際交流基金が実施する「日本語能力判定テスト」や「日本語能力試験」に合格することが必要です。
また、ビルクリーニング分野における技能水準は、全国ビルメンテナンス協会が行なっている「特定技能1号評価試験」に合格することで認定されます。これらの要件をクリアすることで、労働者は適切なコミュニケーション能力と専門的な技能を持ち、業務を遂行できると見なされます。
技能の水準要件を満たすことができる「ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験」は、多数の利用者が利用する建築物(住宅を除く)の内部で、場所や部位、建材や汚れの違いに応じて、自らの判断で適切な方法や洗剤、用具を選び、作業手順に基づいて清掃作業を遂行できる能力が必要です。この試験に合格した者は、専門性と技能を持つ即戦力として認められます。
ビルクリーニング分野で特定技能1号を取得する外国人労働者には、基本的な日本語能力が求められます。具体的には、日常会話ができ、生活に支障がない程度の能力を有していることが必要です。この日本語能力は、「国際交流基金日本語基礎テスト」または「日本語能力試験(N4以上)」に合格することで要件を満たすことが可能となります。
- まとめ: 外国人労働者の受入れするなら
企業が直面している人手不足の問題を解決するための1つの方法として特定技能外国人材を受け入れる際、さまざまな問題に直面します。人手不足で外国人を受け入れたくても、ハードルが高くどのような手続きを行えばいいのかがわからない、といったお悩みを持つビルクリーニング業界の企業様も多いようです。
「ビルクリーニングの従業員として特定技能外国人を採用したいけどよくわからない」「自社で特定技能外国人を採用することが可能なのか知りたい」といった企業様でもご安心ください!
・受入れ前のご相談やシミュレーション
・受入れ時の申請作業
・各種教育
・受入れ後の定期的なサポート