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農業は日本経済の根幹を担う重要な産業ですが、近年深刻な人手不足問題に直面しています。こちらでは、農業における人手不足の実態、その原因と対策についてデータに基づいて詳しく解説します。
- 農業界の人手不足の実態とは?
日本の農業界では、就業者数の減少と高齢化が深刻な問題となっています。特に、基幹的農業従事者(農作業を主に担う人々)と、常雇いの雇用者が減少し続けており、この傾向は年々悪化しています。2010年時点で、農業就業者の年齢構成を見ると、若い世代が少なく高齢者が大半を占めるという著しいアンバランスな状況が浮き彫りとなっています。農業の担い手不足は、特に地方の農村地域で顕著で、農業の持続可能性に大きな影響を与えています。
さらに、2014年には基幹的農業従事者数が前年と比べて4%減少し、168万人にまで減少しました。下記の図で見るとその減少率は明らかです。
また近年だとさらに基幹的農業従事者は減り、136万人まで落ち込んでいます。2000年と比べると43%も減少しています。
このような現象は、若者の都市部への移住や、農業の収益性の低下が要因として挙げられます。結果として、農業界全体での労働力不足が加速し、作物の生産性や品質の維持が難しくなっているのです。
- 農業における人手不足の根本的な原因
農業の人手不足問題は、単なる労働力不足ではありません。その背景には、労働条件の改善の必要性、人口減少と高齢化による労働人口の減少、そして仕事量の不安定さなど、様々な根本的な原因が潜んでいます。
労働条件の改善: 農業は過酷な労働条件であるにも関わらず、平均収入が低く、労働環境も整っていないことが多く、若い世代の就労意欲を削いでいます。
人口減少と高齢化が日本の社会全体で深刻な問題となっている人口減少と高齢化は、農業にも大きな影響を与えています。高齢化により引退する農家が増えているものの、後継者不足のため、労働人口の減少に歯止めがかかりません。
農業は、天候や市場の変動による収入の不安定さ、過酷な労働環境、長時間労働などが重なり、これが特に若い世代の就労意欲を減退させています。また、農作業は季節によって仕事量が大きく変動するため、年間を通じて安定した収入を得ることが難しいのが現状です。
さらに、テクノロジーや機械化が進んでいるとはいえ、多くの中小規模の農家では依然として手作業が中心であり、効率化が進んでいないケースも少なくありません。
労働条件の改善には、まず賃金の見直しが必要です。農業は、他の産業に比べて賃金が低い傾向にありますが、労働時間に対する適切な報酬が得られるようにすることが重要です。また、雇用の安定性を高め、繁忙期と閑散期のバランスをとるための制度や仕組みの導入も考慮されるべきです。
しかし、農林水産省が2023年に発表している被雇用者を対象とした「農業労働環境の改善に関する意識・意向調査」では、満足度には顕著な違いが見られました。水田作と酪農では、全体と比較して満足度が低く、特に水田作では1日の実労働時間の長さに対する満足度が顕著に低くなっています。酪農では、1日の実労働時間と休憩時間に対する満足度が低いことが特徴です。一方で、養豚・養鶏などの分野では、ほとんどの設問で全体と比較して満足度が高く、特に1日の実労働時間の長さに対して非常に満足度が高い結果が出ています。
日本の農業地域では、地域によって人口減少と高齢化の進行度に大きな差が見られます。特に、人口減少が早期に始まった山間農業地域では、1950年代から人口が一貫して減少しており、今後さらに進行することが予想されます。2010年から2050年の間に、山間地域の人口は現在の3分の1に減少し、65歳以上の高齢者が人口の約半数を占めると見込まれています。平地農業地域でも、人口が約4割減少し、高齢化率が40%を超えるとされています。
さらに、中山間地域では、集落の規模が小さくなり、2000年以降は総戸数も縮小局面に入っています。特に、集落人口が9人以下の「無人化危惧集落」は、2010年には約3千集落だったものが、2050年までに1万5千集落へと増加すると予測されています。同時に、2050年までに人口が2/3以上減少する集落も2万6千集落に達する見込みです。これらの集落の多くは中山間地域に集中しており、高齢化が進む中、集落機能の低下が深刻な問題となっています。
集落の高齢化も顕著で、65歳以上の高齢者が過半数を占める集落は、約1万3000から約2万4000に増加するとされています。また、14歳以下の子どもがいない集落も増加し、これにより農業用の排水路などの保全や管理ができなくなる集落が増え、特に山間地域でその傾向が顕著です。
また、集落の寄り合いの開催割合も低下し、特に農業生産に関する議題で集落会議を開催する割合が大幅に減少しています。高齢化が進む集落では、集落活動そのものが低下しており、特に人口が9人以下の小規模集落では、集落活動が著しく減少していることが明らかです。これらの問題は、地域の社会的、経済的な基盤の維持にも大きな影響を及ぼしています。
農業の仕事量は、季節や天候によって大きく変動するため不安定な点が特徴です。春の植え付けや秋の収穫期には労働力が多く必要ですが、冬場は仕事が減少し、労働者は収入の安定を確保しにくくなります。このような季節的な変動は、農業労働者の生活の安定を損なう一因となり、特に若年層の就農意欲を低下させる要因としても挙げられます。
また、農業は天候に大きく依存しているため、予期せぬ気象条件や自然災害によって収穫が左右され、収入が大きく変動するリスクも伴います。これにより、農業従事者は将来の計画が立てにくくなり、離農するケースも増えています。このような不安定さが、農業労働力不足を助長し、農業全体の生産性にも影響を及ぼしています。
- 人手不足解消に向けて必要な取り組み
人口減少や高齢化、過酷な労働条件など、さまざまな要因が絡み合っているこの問題に対処するためには、従来の方法に頼らない新しいアプローチが求められます。
たとえば、スマート農業の導入や労働環境の改善、外国人労働者の活用など、幅広い取り組みが人手不足解消に向けて重要な役割を果たすとされています。これらの施策を総合的に展開することで、農業の未来に向けた持続可能な解決策が見出されるでしょう。
近年、兼業農家の減少や後継者不足により、耕作放棄地が増加しています。これは、農業従事者が限られた面積の農地を管理しなければならない状況を作り出し、効率的な作業や生産性を阻害しています。
そこで、複数の小規模農地を1つの大規模農地に統合することで、農業に多くのメリットをもたらすと期待されています。
どんなメリットがあるかというと、小規模な農地では使えなかった大きな農業機械を使うことができるため作業効率が向上、それによって農地面積当たりの労働時間の削減につながります。また、品種改良や先進的な栽培技術の導入が容易になることで生産性が向上します。さらに、販売力の強化やリスク分散により経営の安定化にも貢献します。
しかし、これらを実現するには、土地所有者間の合意や手続きに時間がかかる場合があるほか、農地の整備や機械の購入といった初期投資が必要で、資金的な負担が大きいことも課題です。こうしたメリットが期待される一方で、課題への対応も重要となります。
これらの課題を解決するためには、行政による支援や農家同士の協働が不可欠です。
政府は、農地の集積や担い手育成を支援する施策を展開しています。また、農家同士で経営組織を形成することで、リスク分散や経営ノウハウの共有が可能になります。
農地の集約と大規模化は、農業界の人手不足解消だけでなく、日本の農業の競争力強化にもつながります。関係機関や農家同士が協力して、一つひとつ課題をクリアにしていくことが重要です。
人手不足解消の切り札として期待されているのが、スマート農業と農業DXの活用です。スマート農業とは、ICT技術を活用して、農業生産の効率化や省力化を図る取り組みのこと。
具体的には、ドローンによる農薬散布や、センサーによる生育状況の監視、AIによる収穫時期の予測などが挙げられます。
農業DXは、デジタル技術を農業に全面的に導入することで、経営の効率化や新たなビジネスモデルの創出を目指す取り組みです。クラウドサービスやデータ分析、IoT技術などを活用することで、生産性向上やコスト削減、品質管理の強化などが期待されています。
スマート農業と農業DXは、スマートフォンやタブレット端末で作業状況を把握したり、遠隔操作で農作業を行ったりできるなど、場所や時間にとらわれない働き方を可能にします。これにより、農業の魅力を高め、就農人口の増加にもつながることが期待されています。
スマート農業と農業DXの活用は全国で進展しており、具体例として、ドローンによる農薬散布では人力作業を効率化し、時間短縮を実現しています。また、センサー技術により、土壌の水分量や気温、生育状況をリアルタイムで監視し、適切な時期に処置を行うことで高品質な農産物の生産が可能です。さらに、AIによる収穫時期の予測により、収穫ロスを最小限に抑える取り組みも行われています。こうしたスマート農業と農業DXは、人手不足の解消に寄与し、農業の持続可能な発展にも貢献すると期待されています。
ただし、これらの導入には、設備やシステムにかかる高い初期投資コストや、デジタル技術に対する知識不足、データを扱う上での情報セキュリティ対策の徹底など、いくつかの課題も存在しています。
これらの課題を解決するためには、政府や民間企業による支援が必要不可欠です。
スマート農業と農業DXは、まだ発展途上の段階にあります。今後、AIやIoT技術のさらなる発展に伴い、さらに進化していくことが期待されており、スマート農業と農業DXの活用によって、農業はより効率的で、持続可能な産業へと変革していくことが期待されています。
- 人手不足解消に向けた具体的な取り組みとは?
日本の農業は、人口減少や高齢化、若者の都市部への移住などの要因で深刻な人手不足に直面しています。この課題を解決するためには、テクノロジーの活用や柔軟な労働力の確保など、さまざまな具体的な取り組みが必要です。以下では、人手不足解消に向けた主要な施策について説明します。
農林水産省は、スマート農業の推進に取り組んでおり、ロボット、AI、IoTなどを活用して現場の課題を解決するため、「スマート農業推進総合パッケージ」に基づく施策を展開しています。その一環として、217地区で実施された「スマート農業実証プロジェクト」では、作業効率の向上や労働負担の軽減が証明されました。農家は経験が少なくても高度な作業を可能にし、省力化を実現しています。
また、スマート農業機械のシェアリングやデータに基づく経営支援を提供する事業体の育成も行われています。データの活用面では、農業データ連携基盤「WAGRI」が公的データや民間データをAPI形式で提供し、農業者がスマートフォンで病害虫の診断や生育予測のアドバイスを受けられるアプリが利用可能です。さらに、畜産業では、搾乳ロボットや家畜の健康管理センサーが導入されており、畜産ICTの利用が広がりつつあります。
一方で、スマート農業機器の導入コストや技術者不足、データの活用促進といった課題が残っています。
日本の農業分野における人手不足解消のため、外国人労働者の受け入れが拡大しています。2012年に約16,300人だった外国人材の数は2022年には約43,600人に増加し、農業の現場で不可欠な存在となっています。
主に技能実習制度を通じて労働力を提供していましたが、コロナ禍における渡航制限や、新たに導入された「特定技能」制度により、技能実習生から特定技能への移行が増加しています。
この特定技能制度は、日本国内での労働力確保を目的に設定されており、5年の在留が許可され、人数制限がないため、受け入れの柔軟性が高まっています。
農業が盛んな地域、特に茨城県、北海道、熊本県などでは外国人労働者の受け入れが多く、一部自治体では全国平均を大きく上回る人数が雇用されています。
こうした地域では農業生産性も高く、外国人労働者が重要な労働力として機能しています。しかし、外国人の増加には、生活環境の整備や言語サポートといった課題もあります。政府は、これらの課題に対応し、外国人労働者が農業に定着しやすい環境整備に向けた取り組みも進めています。
産地間の人材リレーとは、農業に従事する人材を、異なる産地間で移動させて雇用する仕組みのことです。この取り組みは、農作業の繁忙期に人手不足に陥りやすい特定の産地の人手不足を解消するのに有効です。
たとえば大阪府富田林市の西板持地区では、株式会社泉州アグリと地元農家が共同で「産地リレー」に取り組んでいます。この取り組みでは、繁忙期に泉州アグリのチームが人手を提供し、ナスやキュウリの収穫を支えています。実証を通じて、必要な労働力や効率的な運用方法を分析し、地域ごとのニーズに応じた人材リレーの実現を目指しています。
このように、新たな担い手に農業参画の場が提供され、持続的な農業支援が進められています。
ソーラーシェアリングは、農地に太陽光発電パネルを設置し、農作物の栽培と発電を両立させるシステムです。宮城県では、太陽光パネル下でキクラゲ栽培を行い、国内生産量の約5%を目指す事例があり、農産物の付加価値と発電収益を得ることで、農家の安定した収益確保に貢献しています。こうしたシステムには、農作物への日陰効果や雨よけ効果も期待され、農業とエネルギーの両面で持続可能な発展が可能です。
一方で、ソーラーシェアリングの普及には独自の課題も存在します。たとえば、一時転用許可に関する基準や資金調達のハードル、設備コストなどが普及の妨げとなっており、資材の開発やコスト削減のための試行錯誤が続いています。また、パネル配置方法による遮光の最適化や農作物の品質向上など、農業生産へのさらなる影響調査も今後の課題とされています。
- まとめ: 農業の人手不足を外国人労働者で解決するなら
企業が直面している人手不足の問題を解決するための1つの方法として特定技能外国人材を受け入れる方法があることをご紹介しました。しかし、外国人労働者の雇用はそう簡単にはうまくいかず、さまざまな問題に直面します。人手不足で外国人を受け入れたくても、ハードルが高くどのような手続きを行えばいいのかがわからない、といったお悩みを持つ農業界の企業様も多いようです。
そこで、外国人材雇用の課題をワンストップで解決する「登録支援機関」という支援機関を介在させることで、雇用する企業側と実働を行う特定技能外国人いずれにも全面的サポートを行うことが可能となり、双方にとって働きやすい環境づくりが可能となります。
これには、外国人労働者への言語や文化の教育やビザ取得の手続きなども含まれますが、特定技能外国人が安心してスムーズに生活ができるよう住宅確保のサポートや生活に必要な契約支援等までも登録支援機関がサポートします。
このようなサービスを利用することで、企業は効率的に優秀な外国人材を採用し、彼らが新しい環境に順応するための支援も提供できます。また、法律遵守や社内教育プログラムの設計といった複雑なプロセスもサポートされるため、企業は外国人材と共に成長し続けることが可能となるのです。
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