お役立ち情報

日本の人手不足対策の一環として導入された在留資格「特定技能」とは、製造業や外食業、介護など14の分野(2025年2月現在)において外国人労働者を受け入れる制度です。[1]
この特定技能制度では、受け入れ企業や登録支援機関が外国人労働者へ一定の支援を実施する義務があり、なかでも重要視されているのが「生活オリエンテーション」です。
この「生活オリエンテーション」では、日本での生活や仕事を住居の確保や銀行口座の開設、医療や公共サービスの利用方法、日本の生活ルールやマナーの説明など、様々な外国人労働者が日本で安心して生活を始めるために必要な知識を提供するものです。
参考:
動画でカンタン!生活オリエンテーション|出入国在留管理庁 MOJchannel
https://www.youtube.com/watch?v=FqsoBtCs37s
出入国在留管理庁 特定技能ガイドブック
要約
・特定技能外国人生活オリエンテーションは必須
・生活関連、日本の文化やマナー、法律・行政に関してあらゆる側面からのオリエンテーションを行う必要がある
・説明用の資料の用意や場合によっては母国語などで説明をし必ず伝わるような説明の工夫が必要
・特定技能外国人の雇用を検討しているならまずは「登録支援機関」に相談しよう
- 生活オリエンテーションが必要とされる理由
外国人労働者が日本で生活する際には、文化・言語の違いだけでなく、日常生活での安全面や法規制の理解不足から、事故やトラブルなどのリスクがあります。
たとえば交通ルールの違いを知らずに事故にあうなど大きな危険につながる可能性もあります。ゴミ出しや公共交通機関の利用方法から緊急時の連絡先・避難手段に至るまで、安全に関わる基本情報を体系的に伝える役割を担います。
日本語や文化、生活ルールが十分に理解できていない状態で就労を開始すると、不安やトラブルにより、早期退職につながるリスクが高まります。
生活オリエンテーションで必要な生活情報を伝えることで、外国人労働者は安心感を得られ、トラブルを未然に防ぐことにより定着率が向上します。
円滑なコミュニケーションは、単に事故やトラブルを防ぐだけでなく、信頼関係の構築や日常生活・職場での協力関係を深めるという観点でも重要です。職場においても上司や同僚との意思疎通が円滑になります。こうしたコミュニケーションの質の向上は、外国人労働者本人の安心感と日本社会への適応を促し、結果的に企業の生産性向上や地域の活性化にも寄与します。
外国人労働者へのサポート体制が充実していると、「働きやすい企業」「グローバルな人材に配慮している企業」というプラスの評価を得られます。
特定技能だけでなく、技能実習生やその他の在留資格の外国人労働者採用にも好影響があり、優秀な人材の採用がしやすくなります。
- 生活オリエンテーションの具体的な内容

一般的には、以下のような内容について生活オリエンテーションで説明が必要です。
- 金融機関での入出金やATMなどの使い方、口座の売買は犯罪行為であることの周知
- 交通ルールや自転車損害賠償保険(特に自転車が「車両」扱いであるという点は徹底した周知が必要)
- 公共交通機関の利用方法(電車やバスなどの乗り方、路線図などの見方、定期券の買い方、勤務先までの行き方など、電車やバスのなかでの携帯電話での通話は控える)
- 医療機関の受診のしかた(症状別の医療機関の分類、保険証やお薬手帳など)
- 買い物のしかた
- 公的機関での手続き
- 地方出入国在留管理局や労働基準監督署、警察署・消防・救急への連絡方法
- 災害や事件・事故など防犯対策に関する対応方法
- 緊急(ケガや病気)の場合の119番
- ゴミ出しルール
- 近隣住民の迷惑となる行為
- 喫煙ルール(喫煙できる場所の周知)
- 食文化や冠婚葬祭のマナー
- 職場外でのトラブル回避方法
- 在留資格について
- 市区町村での手続き
- 法令違反とされる行為(違法薬物や刀剣類の所持、口座の売買)
- 在留カードの携帯
- 税金の仕組み(所得税・住民税・社会保険料)や社会保険料の支払い義務や種類
- 帰国前には預金口座を停止の手続きをすること
- 労働環境などについての相談や苦情の電話番号、連絡先
- 教育制度や出産子育てに関する支援
- 年金・保険料・生活保護など福祉制度
- 雇用契約内容の再確認(給与、労働時間、休日など)
- 安全についての規則
- 職場内コミュニケーションのルール
- セクハラ・パワハラ防止の取り組み
なお、生活オリエンテーションは少なくとも8時間以上の研修時間を確保して実施することが必要とされています。[1]
しかし、実際には8時間ではまったく十分とはいえません。上記のように内容が多岐にわたっているため時間もかかりますし、折にふれて再度実施する必要があります。
- 生活オリエンテーションを成功させるポイント
講義形式だけでなく、動画やイラストを使った視覚的教材を取り入れると効果的です。オンライン教材やスマホアプリなどを用意すれば、外国人労働者が必要なときに見返して学習でき、理解の向上につながります。
参考までに入出国在留管理庁による「生活就労ガイドブック」を紹介します。英語、中国語、ベトナム語などの19か国語で作成されており、日本の中での生活全般について網羅された内容になっています。
このマニュアルを活用し、勤務先の状況に応じた内容を別に追加して資料を作るという方法もよいでしょう。
特定技能1号外国人に求められる日本語能力は日本語能力試験のN4以上とされています。


引用:日本語能力試験
N4のレベルとは小学校2年生程度のレベルとされており、この程度の日本語力であればこみいった制度などを理解することは非常に困難です。生活オリエンテーションにおいては、説明するだけでは充分ではなく、確実に理解することが求められます。そのためには、その外国人労働者の母語となる言語で説明する必要もあるでしょう。
生活オリエンテーションの実施が終了したら、「生活オリエンテーションの確認書」をかならず受領する必要があります。

参考書式:法務省
オリエンテーションを受けても、実生活や業務の上で必ず新しい問題が出てきます。定期的なヒアリングや相談窓口の設置など、アフターケアが欠かせません。また、込み入った問題に対処するためには母語での対応が必要になることもあります。
特定技能の受け入れには、在留資格手続き、法律面、言語面など多方面への配慮が必要です。登録支援機関や外国人材サポートの専門企業と連携することで、煩雑な業務や言語の問題をスムーズに解決しやすくなります。
- 外国人労働者の雇用を検討するならアセアンブリッジコンサルティングへ
「公的手続きは難しそう」
「生活オリエンテーションは具体的にどう進めたらよいのかわからない」
「自社で日本語教育をするのは難しそう」
「外国人労働者がすぐに辞めてしまったらどうしよう」
といったなどのお悩みをお持ちでしたら当社にご相談ください。
多様な業種で特定技能外国人をサポートしてきた経験があり、企業の状況に合わせた支援を提供します。
母国語対応によるわかりやすい説明だけでなく、様々な手続きなどで困った際にきめ細かなサポートを行います。
在留資格申請から入社後のフォローまで、ワンストップで対応。企業側の負担を最小限に抑え、外国人労働者の定着率向上を目指します。また、万が一人員整理が必要になった際には、転職先の紹介や必要な行政上の手続きも行います。
- まとめ
特定技能外国人労働者の受け入れには「生活オリエンテーション」が必須で、かつ行うだけでなく、必ず理解していることが求められます。
これは制度があるからという問題ではなく、言語や文化の壁に悩みがちな外国人労働者をサポートすることで定着率の向上や、業務効率の向上にもつながります。