物流企業が特定技能外国人を採用するメリットと業務範囲

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物流企業が特定技能外国人を採用するメリットと業務範囲

物流業界ではトラックドライバーや倉庫人材の不足が深刻化しており、解決策のひとつとして特定技能外国人の採用を検討する企業が増えています。物流倉庫分野は2027年度に運用が始まる新しい区分のため、対象業務や注意点を事前に押さえておかないと、採用後に思わぬトラブルにつながりかねません。

この記事では、人手不足の解消につながるメリットから、任せられる業務の範囲、採用時に押さえておきたい注意点まで整理しました。

トラックドライバーも倉庫スタッフも集まらず、頭を悩ませている物流企業は少なくありません。ここでは物流業界が抱える人手不足の実情と、解決策として注目される特定技能外国人材の位置づけを整理します。

物流業界における人手不足の状況と背景

物流産業では、トラックドライバーの不足に加え、倉庫内で検品や仕分けを担う人材の確保も年々難しくなっています。背景には業界全体の高齢化と採用競争の激化があり、既存社員の負担が積み重なっている企業も少なくないようです。

近年はネット通販の拡大により取り扱う物流量そのものが増えている一方で、現場を支える人手が追いつかず、出荷の遅延や既存社員の疲弊といった問題に直面している企業も見られます。求人媒体への出稿や時給の引き上げといった従来型の採用手法だけでは、必要な人数を安定して確保することが難しくなりつつあるのも実情です。

この人手不足は一時的な問題ではなく、労働力人口の減少により構造的に続くと見られており、解決策のひとつとして特定技能制度を活用した外国人材の採用が増加しています。パートやアルバイトといった短期的な雇用形態だけで現場を回そうとすると、シフトの調整や教育の負担が特定の社員に偏りやすく、組織全体の疲弊につながりかねません。

物流業界で注目されている【特定技能外国人】とは

特定技能は、一定の技能水準と日本語能力を満たした人が就労を目的に日本に滞在できる在留資格です。技能実習が国際貢献を目的とした人材育成の制度であるのに対し、特定技能は現場の即戦力となる人材の受け入れを通じて労働力を確保するための制度であるという違いがあります。

特定技能1号の在留資格を得るためには、分野ごとに実施される技能測定試験と日本語能力を測る試験に合格しなくてはなりません。物流業界に関わる区分には、すでに運用されている「自動車運送業」分野に加え、倉庫内業務を対象とする「物流倉庫」分野があります。後者は2026年1月の閣議決定で新設が決まり、2027年度からの運用開始が予定されています。

物流倉庫分野の対象業務や人材の要件は自動車運送業分野とは別に定められる見通しのため、自社がどちらの分野を見据えるのか早めに把握しておくことが望ましいでしょう。

物流倉庫分野の運用が始まれば、企業にはどのようなメリットが見込まれるのでしょうか。今のうちに押さえておきたい代表的な5つを、背景とあわせて紹介します。

人手不足の解消と繁忙期を含めた安定した労働力の確保

慢性的な人手不足の解消に加え、ネット通販の需要が高まる年末や決算期などの繁忙期にも計画的に人員を配置でき、事業計画が立てやすくなるとみられています。

一定の技能を持つ人材による即戦力の確保

基礎的な業務知識を備えた人材を確保しやすく、教育コストを抑えて早期に戦力化できます。現場指導役の社員が一人ひとりに時間を割かれる状態が続くと、既存業務にしわ寄せが出やすいため、指導役の負担軽減につながる副次的な効果も期待できるでしょう。

中長期的に働ける人材による雇用の安定

特定技能1号は一定期間にわたり就労が認められる在留資格であるため、物流倉庫分野でも人材の入れ替わりを防ぎやすくなると考えられます。長期的な就労を前提にできれば、育成計画やキャリア形成の支援にも取り組みやすくなるでしょう。定着率が高まれば、採用や教育にかかるコストを長期的に抑えられる点も、企業にとって見逃せないメリットといえます。 

多言語・多文化人材による職場の活性化

異なる文化的背景を持つ人材が加わることは職場のコミュニケーションの幅を広げ、言語や習慣の違いを理解し合う過程は既存の日本人社員にとっても業務の進め方を見直す機会になるでしょう。また、普段とは異なる視点からの気づきが、業務改善のアイデアにつながるケースもあります。

受け入れを機とした社内体制の整備

マニュアル整備や多言語対応、安全管理の仕組み強化が進み、外国人材だけでなく職場全体の生産性向上にもつながると考えられます。

これらのメリットは単独で得られるものではありません。安定した人員確保が定着率の向上を後押しし、定着率の向上が社内体制の整備を促すというように、互いに影響し合いながら効果を積み重ねていく性質があります。ただし、いずれも物流倉庫分野の運用開始を前提とした見込みであり、実際の効果は自社の受け入れ体制づくりの進み具合によって左右される点には留意が必要です。 

任せられる業務の範囲を把握しないまま採用を検討すると、運用開始後にトラブルへつながりかねません。現時点で示されている業務範囲を確認します。

物流倉庫分野で対応が想定されている業務の範囲

物流倉庫分野の特定技能外国人が担当できる業務としては、

  1. 検品や仕分け
  2. 保管
  3. ピッキング
  4. 在庫データの入力

といった業務が想定されています。検品や仕分けといった定型的な作業が中心となる見通しですが、荷物の破損を防ぐための丁寧な取り扱いや在庫データの正確な入力といった作業も欠かせないのです。

【注意】庫内業務と配送業務の切り分け

倉庫内作業と配送業務を一体で担う物流企業は珍しくありませんが、配送は自動車運送業分野の対象であり、物流倉庫分野の人材が担うことはできない見込みです。また、倉庫と配送を自社で運用する企業は、庫内業務を物流倉庫分野の人材に、配送を自動車運送業分野の人材や日本人ドライバーに担わせる形で業務を切り分ける必要が生じ、具体的な区分は今後の制度整備で確定していく見通しです。

  • こうした業務範囲の線引きを現場任せにしてしまうと、悪気なく対象外の作業を任せてしまい、結果として制度上のトラブルに発展する可能性もあるため、管理者側があらかじめ業務内容を整理し、現場に周知しておくことが欠かせません。

特定技能外国人の採用にはメリットが期待される一方、準備を怠ると想定外のトラブルへとつながりやすい注意点もあります。運用開始を見据えて押さえておきたい二つを取り上げます。

日本語能力とコミュニケーション体制の整備

一定の日本語能力が求められる見通しであっても、業務指示や安全管理の場面ではより丁寧な伝え方が必要になる場合があり、多言語対応のマニュアルを整備する工夫が求められます。特に危険を伴う作業エリアでは、指差し呼称や写真付きの手順書など、言葉だけに頼らない伝達方法を取り入れる企業も増えているようです。

こうした工夫は外国人材だけでなく、経験の浅い日本人スタッフにとっても理解しやすい仕組みになり、職場全体の安全性向上につながる面もあります。あわせて生活面や文化面のサポート体制を整えることが、定着率の向上につながると考えられています。

運転を伴う業務への不安と免許取得の実情

物流倉庫分野の特定技能人材は運転業務を主たる業務としない見通しですが、庫内でのフォークリフト操作や構内での車両移動など、免許や資格が役立つ場面もあるでしょう。フォークリフトの資格取得には日本語での学科講習に一定の理解力が求められるため、あらかじめ受講のサポート体制を検討しておくと安心です。

近年は外国人が日本の運転免許を取得すること自体が難しくなっているとされ、対応可否が採用時の懸念点になり得るため、必要な資格の有無を整理しておくとよいでしょう。運転を主たる業務としない分野であっても、構内での車両移動を任せる予定があるなら、採用の初期段階で本人の希望や取得状況を確認しておいたほうが、後々の配置転換もスムーズに進められるようになります。

採用した人材に長く活躍してもらうためには、入社後のキャリアパスをどう描けるかも重要な視点になります。物流倉庫分野で実務経験を積んだ人材は、一定の要件を満たせば自動車運送業分野など別の特定技能区分へとキャリアを広げられる可能性があり、担当業務の幅や将来の選択肢は本人にとっても関心の高いテーマです。

現場でリーダー的な役割を任されるようになれば、後輩となる外国人材の指導役として活躍してもらうことも見込まれます。企業にとっても、人材育成や定着支援は長期的な戦力を育てる投資として捉えられます。目先の人手不足を埋めることだけを目的に採用してしまうと、本人のモチベーションが続かず早期離職につながることもあるため、入社後どのように成長してもらいたいかを採用の段階からある程度描いておくことが望ましいと言えるでしょう。

物流倉庫分野の特定技能外国人採用は、2027年度の運用開始に向けて制度面・実務面で押さえるべきポイントが数多くあり、早めに相談できる窓口を紹介しています。採用に向けて準備を進めるには、在留資格や受け入れ条件についての制度理解に加え、手続きの実施や体制整備まで専門的な知見が求められるでしょう。

アセアンブリッジコンサルティングでは、物流業界に精通したスタッフが制度動向の把握から採用準備までサポートしています。また、在留資格の申請書類の準備から受け入れ後の生活サポートに至るまで、企業ごとの業務内容や体制に合わせた対応を行っており、初めて外国人材の採用を検討する企業からの相談にも対応しています。人手不足の解消や業務範囲に合わせた人材活用を検討している企業は、運用開始を待たずにまずは現状の課題を相談してみるのがおすすめです。